てんかん
てんかんとは
てんかんとは、大脳の神経細胞が何らかの原因によって過剰興奮を起こし、さまざまな症状が出現する病気です。一般的な有病率は、100人におよそ0.8~1人です。有病率はUカーブのように、小児、高齢者多い傾向を示します。原因としては、出生時の脳損傷、脳炎、頭部外傷、脳卒中、脳腫瘍などさまざまな神経疾患がてんかんの原因になりえます。
症状
てんかんの症状は患者さんそれぞれ様々です。一般の方は、‘泡を吹いて、倒れてけいれんする’、や‘ばたんと倒れる’といったイメージをお持ちかもしれませんが、必ずしもそのような発作ばかりではありません。一般に、前ぶれ・前兆といった症状、また意識障害、全身けいれんと分類することができます。自分の症状がてんかんの症状かどうか、不安な場合には、気になる症状をノートやスマ―トフォンに記録し、外来に持ってきていただけると助かります。
てんかんの発作症状の一例
- ぼーっとする
- 口をくちゃくちゃする
- 手をまさぐる
- ぴくっとする
- 全身けいれん
診断
てんかんの診断は、繰り返す発作があることで診断されます。しかし先に述べたように発作がてんかんによるものかどうかを診断するには時に難しいことがあります。外来では、詳細な問診、脳波、MRIを行い診断します。しかし時に外来で診断までできない難しい場合には、入院検査を行います。入院し、脳波を継続して装着し、記録するビデオ脳波モニタリング検査があります。この検査を行うことで、正しいてんかんの診断、もしくはてんかんではない原因の発作、もしくは手術で治るてんかんなど詳細に知ることができます。
当科でも2020年度より、脳卒中ケアユニット内の病室1室でビデオ脳波モニタリング検査になりました。足立区初となるビデオ脳波室で、これにより地域の患者さまで、発作症状にお悩みの場合迅速に診断することが可能です。
治療
治療の大原則は、適切な薬物治療(抗てんかん発作薬の内服)になります。しかし、その前に重要なこととして、規則正しい生活、すなわち処方された薬を規則正しく服用する、睡眠を十分にとった生活を送るといったことがあげられます。いくらいいお薬を飲んで発作が止まらないと外来に来られる方がいますが、徹夜していたら、もちろん発作は止まりません。
薬物治療は、てんかん病型に合わせて処方いたします。てんかんは通常は、焦点性(部分性)、全般性に分けることができます。まずはこの診断が重要です。なぜならこの分類によって使う薬も変わってくるからです。現在さまざまなガイドラインが出されており、それぞれにあった治療薬が選択されます。しかし戻りますが、はじめの診断が非常に重要です。この診断が違っていたら止まるべき発作も止まらないこともあります。
適切な抗てんかん発作薬で発作がコントロールされない場合には、外科治療が考慮されます。通常は、1年以上適切な抗てんかん薬で発作がコントロールされない場合のことを言いますが、小児の場合には、脳の発達に影響も与える場合もあり早期に手術治療を行うこともあります。またてんかん発作で発症し、その後MRIで腫瘍性病変や血管性病変が見つかった場合、このような場合にも外科治療により高い発作コントロールが得られるので外科治療を優先することがあります。
外科治療をする上で、いくつか評価を行います。先に述べましたビデオ脳波モニタリング検査、PET、アミタールテスト、高次脳機能検査などによって推定される発作の焦点を絞り込み、その場所が摘出可能かどうかの検討するための検査です。およそこの検査に2週間程度、その後頭蓋内電極留置術を行います。(図1)この検査は、実際切除範囲の脳の場所を決めるための検査(手術)になります。検査といいましても、開頭もしくは穿頭により電極を留置、その後発作をビデオ脳波モニタリング検査と同じように実際に起こしていただき、発作に関与しかつ脳の重要な機能がない部位を切除するための検査(手術)になります。その後最終的に手術(焦点切除術)となります。この一連の検査・手術に3週間程度かかります。
なお、当院では、2022年に日本初となる電極を留置するためのロボットを導入しました。これを用いることにより手術時間も短く、高い精度で留置することが可能になり、すでに数十例の実績があります。(図2)
てんかんを手術で治す、なんとも不安がいっぱいになるかと思いますが、もちろん十分な薬剤治療を行い、それでもなお生活に支障があるような場合、じっくりお話を進めて、患者さまの希望に合った治療を進めていきますのでご安心ください。
その他、ケトン食療法、迷走神経刺激療法など御座いますが、すべてのてんかんの治療オプションについて相談可能です。
担当医:久保田有一
日本脳神経外科学会専門医・指導医
日本てんかん学会専門医・指導医
日本臨床神経生理学会専門医・指導医